皆さんバスケしてますか?
バスケにおいて高いジャンプ力はどのポジションにも求められる能力の1つで高く跳べるほどプレイの自由度が上がります。
そのため、スキルトレーニングとは別にジャンプ力を向上させるためにレジスタンストレーニングなど取り組むと思います。
ジャンプ力向上に有効なトレーニングはいくつもありますがジャンプ動作自体を物理的に見て分解し自分の動作に落とし込める方は少ないと思います。
物理的に動作を理解しておくとジャンプ動作を改善しようとしたときの判断材料が増え修正精度が上がります。
当ブログでは物理で見るバスケシリーズとしてバスケの動作や現象を物理的に解説しています。
このシリーズを読むことで物理目線で見たバスケを理解し実際のスキルや動作に落とし込めるようになるお手伝いをしています。
今回は高く跳ぶためのジャンプ動作とは物理的に見てどのような動作なのか解説していきたいと思います。
この記事の内容を通して高く跳ぶ原理を理解していただければと思います。
【この記事で得られる情報】
・ジャンプ動作における力学的運動について
・高く跳躍するためのジャンプ動作について
ジャンプにおける力学的運動
ジャンプという動作は身体を1つの物体と考えた時、地面から身体を投げ上げる運動として捉えることができます。
実際の身体では自分の筋肉を使って空中に投げ上げる動作が物理的に見たジャンプという動作です。
厳密に見ればジャンプ動作に必要な筋肉が連動して空中に身体を投げ上げる出力をした結果がジャンプに繋がります。
とはいえ、今回のように物理的に分解する場合はできるだけ簡単な系にして考えると理解しやすいです
簡単な系で考えると身体を地面から投げ上げる運動は力学的には鉛直投射運動という運動として考えることができます。
鉛直投射運動とは
鉛直投射運動とは鉛直方向に初速を与える運動の事を指します。
鉛直とは垂直方向に真っすぐという意味です。
初速を与えるということは物体に対して何かしら外力を加えて始まる運動ということになります。
鉛直投射というのは上向きに対しても下向きに対しても地面に対して垂直の動きであれば当てはまるので単純に鉛直投射運動という場合どちらの方向に初速を与えているか分かりません。
ジャンプ動作の場合は空中に向かって勢い(初速)をつけることになるので上向きの方向に投射運動をします。
ジャンプ動作のような上向きの方向の鉛直投射運動は鉛直上方投射運動というのが正しい呼び方です。
ここでいう初速というのは地面を蹴って身体が地面から浮き上がる瞬間の速度を指します。
図で鉛直上方投射運動を表すと次のようになります。
実際の運動では打ち上げた同じ位置に着地しますが流れを分かりやすくするため左から右に運動の経過を切り取って描写しています。
図:鉛直上方投射の流れ
鉛直上方投射運動では最高到達点に向かって高さが上がるにつれて速度は低下していきます。
最高到達点では一瞬速度はゼロになり速度の方向が上向きから下向きになり落下を開始します。
落下では高さが下がっていくにつれて速度が上昇していき地面に到達する頃に初速と同じ速度まで加速しています。
鉛直上方投射運動では上向きが正の速度、下向きが負の速度として扱われるので速度の大きさ(速さ)は同じですがマイナスの符号が付きます。
鉛直上方投射運動の計算式
鉛直上方投射運動の速度と高さを求める計算式は次のようになります。
vは速度、gは重力加速度、tは時間を指しています。
今回の解説では計算式については詳しく解説はしません。
計算式からわかる重要な部分だけ解説します。
鉛直上方投射運動の計算式から導かれるジャンプのポイント
鉛直上方投射運動の計算式からわかる重要なポイント、それは最高到達点を求めることで見えてきます。
計算過程は省きますが最高到達点は速度と高さの計算式から次のように求められます。
V0は初速、gは先ほどと同様重力加速度を指しています。
重力加速度は地球上どこにいても一定な変動しない数値なのでこの式からわかるのは初速が早いほど最高到達点は高くなるということです。
つまり物理的に見ると飛び上がる瞬間にどれだけ初速度を出せるかが最高到達点を高くする要素になるというわけです。
しかも式では2乗で計算されることから初速が2倍になると最高到達点は4倍になります。
それぐらい初速が最高到達点に与える影響は大きいということです。
実際の試合では垂直にジャンプするよりも跳躍しながら前方方向にも移動する動きが多いと思います。
この場合は鉛直投射運動としてではなく斜方投射運動として捉えるとより実際のジャンプに近づきます。
斜方投射運動とは
射方投射運動はシュートの放物線に代表されるような運動を指します。
力学的には鉛直上方投射運動の初速を垂直方向ではなく角度をつけて斜め方向に与えた場合の運動を指しています。
図:射方投射運動の流れ
初速を斜めに与えることで鉛直投射運動では1つの方向だった力が水平方向に移動する力と鉛直方向に移動する力の2つの力に分かれます。
これによって計算式が少し複雑になり次のようになります。
方向が2つになったことで計算式が倍に増えました。
そして角度がついたことで式中にsinθ,cosθが入ってきて一見難しい計算式のように見えますが、鉛直投射運動の計算式と同様式からわかる重要なポイントについてのみ解説します。
射方投射運動の計算式から導かれるジャンプのポイント
射方投射運動の水平方向の移動距離と垂直方向の高さを導く式は鉛直投射運動の最高到達点の計算式と同様です。
違いはsinθ、cosθが入ってきて角度による数値変化があるということだけです。
つまり、初速の角度の違いによって水平方向の移動が強調されるか垂直方向の高さが強調されるかが変わります。
バスケにおいては当然高さを優先させたいので垂直方向の高さが重要です。
垂直方向の高さを強調させるためには初速を与える角度は垂直に近いほど最高到達点は高くなります。
これは感覚的にも明らかで理解しやすいと思います。
しかし、実際のジャンプ動作では高く跳ぼうと思うと助走をつけてジャンプします。
すると助走は水平方向の力なのでそのままでは初速の角度は低い角度になって高さ方向のエネルギーに上手く繋がりません。
助走の水平方向の力をジャンプの垂直方向の力に変換する方法はトッププレイヤーから学んでいきたいと思います。
トッププレイヤーのジャンプ動作
鉛直投射運動と射方投射運動について理解いただいたところで実際にトッププレイヤーがどうやって飛び上がっているか見てみましょう。
今回の資料は2020年スラムダンクコンテストの覇者Derrik Jones Jr.のダンクです。
ジャンプ力をあげたいなら筋力トレに加えて身体操作の向上も必要。
— ぱらと@NSCA兼業トレーナー (@ParatoCrypto) 2020年3月27日
参考として今年のスラムダンクコンテスト覇者DJ.Jrのジャンプを見て見ましょう。
接地の仕方、膝・骨盤・状態の角度、腕の振る速度(姿勢との連動)などトレースできると力の流れも見えてくるかと。pic.twitter.com/bwpT8w1etG
動画を見て分かる通り、飛び上がる直前までは水平方向に移動しますが跳躍の角度はかなり垂直に近い理想的な飛び上がりとなっています。
なぜこんなに綺麗に水平→垂直にエネルギーの方向を変えられるのか、ポイントはそれぞれの足の使い方にあります。
高く跳ぶための足の使い方
高く跳ぶための足の使い方のポイントはそれぞれの足の役割をキチンと理解することにあります。
先ほどのDJ.Jrの跳躍から解説すると最後に接地する右足は垂直方向に力を入れているわけではありません。
最後に接地する右足の役割はエネルギーの方向を水平方向から垂直方向に切り替えることです。
感覚としては接地した際のグリップによる引っ掛かりを使ってエネルギーの方向を垂直方向に逃がすイメージです。
キャプチャがからイメージは既にできてると思いますがエネルギーのベクトルは左足の接地から右足の接地で添付のように切り替わってます。
— ぱらと@NSCA兼業トレーナー (@ParatoCrypto) 2020年4月9日
右足の設置位置と足の方向についてはここでまとめた内容の減速接地の内容が参考になるかと💡https://t.co/O31rObmV7c pic.twitter.com/xGE4sM2YJ9
つまり左足が最後に接地するまで助走のエネルギーは水平方向で続いていますが右足が接地して引っ掛かることで垂直方向にエネルギーが変換されているということです。
それを意識してもう一度先ほどの動画を見て頂くと右足と左足それぞれの役割が見えてくると思います。
スラムダンクコンテストでは美しく格好よくダンクを決める必要があるため必然的に跳躍動作も美しい(理想的になる)傾向にあります。
DJ.Jrのジャンプに限らず歴代のスラムダンクコンテストの動画を見返すのもよい勉強になると思います。
高く跳ぶ原理を理解して効率的にジャンプ力アップ
今回は高く跳ぶための原理を力学的目線から解説しました。
実際にジャンプする際に角度などを考えながら飛ぶのは効率が悪いです。
しかし、意識しなくても理想的な角度で飛び上がれるように繰り返し練習することは効率的にジャンプ力アップできる近道になることは間違いありません。
実際に自分の身体で高く跳ぼうと思うと上体や腕の使い方、しゃがみ込む深さや足の角度など様々な要因が複雑に絡み合うので全てを綺麗に連動させることが重要です。
物理的には身体という塊を上に投げ上げるだけですが実際の身体ではより複雑な動きによって地面から浮き上がっていることを理解して練習に臨みましょう。
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